最近何かと話題の「リールドブ漬け洗浄」について意味があるのか?理論的に解説していきたいと思います。
結論からいうと、機能維持のための洗浄効果は期待できないというのがリールの構造から導き出される答えです。
次の図をご覧ください。
この図はリールの断面を簡素化したものです。さて、一般的に防水加工されたリールの場合だと、水にドブ漬けした場合①~④のどこまで水が入るのかわかりますか?
当てはまる番号をすべて選んでみてください。
※自分のリールが防水加工されているかどうかわからない方はこちらをご覧ください。
ドブ漬けで洗える箇所を明確にしてみましょう
①スプールの内側(ドラグ側ではなく、シャフト側)
②ローターとボディの間
③クラッチが格納されているボディ内
④ドライブギア等が格納されているボディ内
簡素化された図で申し訳ありませんが、①~④までの詳細は上記の通りになります。さて、ドブ漬け洗いで水が入るのはどの部分でしょうか?
答えはスクロールしてください
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答えは①、②です。
いかがでしたか?「意外と中まで洗えてないな…」と思われた方も多いと思います。
実はドブ漬けで駆動部は洗えていない
リールに詳しい方ならお分かりだと思いますが、ドブ漬けで水が入る①②は実はリールの動作に大きく影響する場所ではありません。
①のスプール内部はメインシャフトが上下しているだけなので回転性能に対する影響はほぼありません。メインシャフトはパッキン等で防水されていますが、むしろ水圧をかけるとメインシャフトを伝って内部に水が浸入する可能性があります。
②のローターとボディの間は、形状からわかるようにリールを逆さにして水を入れないと、通常水が入らない構造になっています。メーカーが「上からシャワー洗浄」を推奨しているのはここに水が入らないようにするためです。
そして③へのクラッチにつながる場所を防水しているのがマグシールドやコアプロテクトです。メーカーはこの部分を防水するために躍起になっています。なぜならクラッチに水が入ったらリールが一発でダメになるからです。
クラッチはハンドルの回転方向を司るパーツですが、一度水が入ると乾きにくく、最悪の場合錆びて固着してしまう可能性があります。また、ゴミや塩分の影響でシャリ感がでやすいパーツです。
④は当然ながら水が入ってはいけない場所で、各種ギアやハンドルのベアリングが格納されています。
②を洗う必要があるのか…?
①に関しては通常のシャワー洗浄でも水が入る場所なので、水に濡れることは問題ありません。
対してローターとボディの隙間である②をドブ漬けで洗う必要があるのでしょうか?
前述したようにこの部分はクラッチへの経路が防水加工されています。②に水を入れてもギアやベアリングには水は届きません。つまり回転性能には無関係です。(そもそも水洗いだけで回転性能が維持回復できるわけではありません。)
シマノだったら意味があるかも…?
シマノ→防水
ダイワ→防水防塵
ダイワのマグシールドは防水防塵でクラッチへの隙間が完全に塞がっていますが、シマノのコアプロテクトは隙間が空いています。そのため②に付着した塩分やゴミが空気と共に内部に侵入するという可能性を考えられなくはありません。
ただ、その影響は限りなく低いものだと考えられます。(私は防水機能がないリールを4年使用した後に分解したことがありますがクラッチは綺麗でした。)
ダイワの場合は、クラッチへの経路は完全に塞がっていますので②は洗わなくてもOKです。寧ろマグを水に濡らすと、マグが流れたりゴミが付着する可能性があるのでかえって良くないと思います。
回転性能を維持するためには何をすればいい?
そもそもメーカーが推奨する水洗いは外観の汚れを落とすのが主な目的で、回転性能を維持を狙ったものではありません。
大切なのは適切な洗浄と注油です。
回転時の異音のほとんどは「ラインローラー」によるものです。ラインローラーが原因の場合は実釣時に異音がして、空巻きすると音がならないのですぐにわかると思います。
ラインローラーは一部防水加工されているものを除き、定期的な洗浄とグリスアップが必要です。パーツクリーナーで洗浄後にグリスを塗布して組み立てれば回転時の異音はほぼなくなると思います。
まとめ:回転性能の維持には適切なメンテナンスを行いましょう
手段は目的によって変わります。
目的が「回転性能の維持」の場合、ドブ漬け洗いはあまり意味がなく、且つ不完全なメンテナンス方法です。
毎日洗浄するよりも、たまに駆動部を洗浄注油するほうがよほど効果的です。
正しいメンテナンス方法で、リールを長く使用できるように心がけましょう。